vol.18 「二刀流のリアルと整形外科との親和性」
【第一章】「諦めないペダル」を踏み続ける二刀流整形外科医
本日も全国の整形外科医で、「医者以外にもコレ頑張ってるよ!」という大谷選手のように才能豊かな二刀流先生を紹介していきます!!
本日ご紹介するのは、 「トップカテゴリーで培った根性!白衣をまとうロードレーサー」 興生会相模台病院(北里大学整形外科医局)武井 裕(たけい ゆう)先生です!!
プロの世界に挑んだ、異色の整形外科医
武井先生は、興生会相模台病院に勤務する整形外科医でありながら、日本のトップカテゴリーに迫るロードレースのトップ競技者でもあります。
競技を始めたのは、山形大学の学生時代。バレーボールと並行して乗り始めた自転車に魅了され、社会人になってから本格的にレース活動を開始しました。

異例のスピード出世とトップツアーへの挑戦
その才能はすぐに開花します。初期研修2年目(2017年)に実業団登録をし、JBCF(日本自転車競技連盟)の公式戦に参戦。
「E3(Jエリートツアーでは一番下のカテゴリー)では初出場・初優勝、翌日E2でも優勝しE1へ昇格、とんとん拍子に勝ち進んでいきました」
ロードレースの世界でも異例の短期間でE1へ昇格を果たし、2017年、2018年、2024年でJBCF J ELITE TOUR E1 10勝という輝かしい戦績を記録。その活躍が認められ、2019年から2023年まではJ PRO TOUR/JCLに参戦(VC福岡所属)し、トップカテゴリーで5シーズンを戦い抜きました。
二刀流の強み:「運動器」を極めるプロとして
整形外科とロードレース。武井先生にとって、この二つの道は相互に作用するものです。
競技者として極限の運動負荷や体のメカニクスを実体験することで、「運動器を専門とする整形外科医」としての知見が深まります。一方で、解剖学や生理学の知識は、自身のトレーニングの質を高め、効率的なメニューを組むことを可能にします。
特に上位のレースでは、自分の勝利だけでなく、チームの仲間のアシストをしたり、アシストしてもらったりと、チームワークと戦略が重要になります。レース中の駆け引きも含めて、集団の中で的確に判断する能力は、手術やチーム医療にも通じる、整形外科医として何物にも代えがたい経験なのです。
【第二章】激務と練習の両立のリアル、挫折からの学び
プロツアーの洗礼!時速50km超の異次元バトル
アマチュアで圧倒的な実力を見せつけた武井先生ですが、プロの戦場であるJプロツアーでの道のりは決して平坦ではありませんでした。
トップカテゴリーでは、まず速度域が全く違うと言います。アマチュアの巡航速度が43〜45km/h程度であるのに対し、プロでは巡航速度が50km/hを超えてきます。勝負所ではさらに速度が上がり、海外からの有力選手が牽引し始めると集団が崩壊するほどの「異次元」のスピードバトルが繰り広げられます。
「プロツアーに参戦してみると、まず速度域が全然違います。勝負所ではさらに55km/h程度まで上がり、ゴール前となるとさらにそこからスプリント勝負になります」
この超高速域でのレースは、戦略が全く異なることを意味します。プロツアーでは集団の後方に位置すると、コーナーの度に強烈なインターバルがかかり脚を猛烈に消耗します。アマチュア時代に培った個人の力だけでは通用しない、チームのメンバーとのチームワークや状況判断、戦略が勝敗を分ける世界なのです。
試練の時期。それでもペダルを踏み続けた理由
トップカテゴリーでの厳しい戦いの末、5シーズン在籍したプロチームから契約解除を言い渡されます。目標もモチベーションも低迷する、競技者として最も苦しい時期でした。
また、研修医〜後期研修医始めの時期は、「慣れない業務に加えてハードな練習、人によっては風当たりも強くかなりキツかった」と振り返ります。多忙を極める整形外科の業務の中で、平日も仕事前や休日の午前中などを中心に、月1500〜1800kmもの距離を走り込む生活は、想像を絶する厳しさです。
それでも武井先生がペダルを止めなかったのは、競技が「自分にとっての生活の一部」になっていたからです。その時の経験こそが、今の先生を支えています。
「今思えば、当時できることは全てやれたと思います。」
再起と証明:年間ランキング1位を獲得
挫折から立ち上がった武井先生は、2024年に新チーム「TRYCLE.ing」へ移籍し、エリートツアーに再参戦。そこで見事に実力を証明し、2024 J ELITE TOUR 年間ランキング1位を獲得し、総合リーダーの座に輝きました。さらに、2024年 SAGA国スポに神奈川代表として招集されるなど、再びトップ選手として結果を残し続けています。

【第三章】
仕事も競技も、気が済むまで突き詰めろ
若手整形外科医(読者の皆さま)の立場からすると、仕事と競技の両立は非常に遠い挑戦に見えるかもしれません。しかし、武井先生のエールは、両立の是非ではなく、「熱意をもって取り組むこと」の重要性を教えてくれます。
武井先生は、多忙なキャリアの中で、「やり切る」ことにこだわり続けてきました。
「あまり偉そうなことは言えませんが、若手には仕事にしろ趣味・競技にしろ、もしやりたいことがあるのであれば、それを大事にして気が済むまで突き詰めて欲しいと思います」
「やり切る」ことで得られるものは、競技の成績や専門知識だけではありません。それは、困難な状況を乗り越える精神的なタフネスであり、そして何よりも「自分はやるべきことをやった」という確固たる自信です。この自信は、多忙な整形外科医としてのキャリアを歩む上で、必ず大きな支えとなるでしょう。
国スポ、マスターズ。終わりのない挑戦
一度はトップカテゴリーでの活躍を夢見て挫折を味わいましたが、「改めて自分にとっての生活の一部として続けていきたい」と語る武井先生。その闘志はまだ燃え続けています。
土曜日が勤務となり、レース参戦がやや厳しくなる中でも、今後の目標として国スポでの入賞、そしてマスターズ全日本での優勝などを考えています。
整形外科医として、競技者として、「諦めないペダル」を踏み続ける武井先生の挑戦は、これからも私たち若手整形外科医に、仕事も趣味も全力投球で挑むことの意義を伝え続けてくれるでしょう。
武井 裕(たけい ゆう)先生
所属:興生会相模台病院(北里大学整形外科医局)
チーム:TRYCLE.ing
Instagram:https://www.instagram.com/yu_takei?igsh=a2h1eW00OWlnenpxd3&utm_source=qr
主な戦績:
2017, 18, 24年 JBCF J ELITE TOUR E1 10勝
2019〜2023年 JBCF J PRO TOUR/JCL参戦(VC福岡所属)
2024年 J ELITE TOUR 年間ランキング1位 総合リーダー獲得
2024年 SAGA国スポ出場 神奈川代表