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    なぜ今PRPか? 基礎と種類を徹底整理

    〜Dr.Ikko & メデ子の膝再生医療マスター講座〜
    Medeco 編集部
    Dr Ikko
    Dr Ikko
    膝関節専門のベテラン指導医。エビデンスを重視しつつ、新しい治療にも柔軟な視点を持つ。「手術は最終手段、その前にできることを尽くす」が信条。
    メデ子先生
    メデ子 先生
    整形外科専攻医(後期研修医)。熱心だが、最近増えている患者さんからの「再生医療」についての質問にタジタジになっている。

    「第3の選択肢」としてのPRP

    (医局にて)
    Ikko先生! また外来で患者さんに聞かれちゃいました。『PRPって私の膝に効くんですか?』って。最近、週に何回も聞かれるんですけど、正直、どう答えていいか自信がなくて……。
    メデ子

    メデ子

    IKKO先生

    Dr Ikko

    メデ子先生、いい質問だね。今はネットで情報を調べてから来る患者さんが増えているからね。で、メデ子先生はどう答えたんだい?
    えっと……『まだ保険が効かない新しい治療で、血小板を使うやつです』くらいしか。だって、ヒアルロン酸注射と何が決定的に違うのか、正直ピンと来てなくて。
    メデ子

    メデ子

    IKKO先生

    Dr Ikko

    なるほど。まずはそこから整理しようか。 我々が今まで行ってきた膝OA(変形性膝関節症)の治療戦略を見てごらん。
    膝OA(変形性膝関節症)の治療戦略
    保存療法:薬物療法、ヒアルロン酸注射、リハビリ
    手術療法:骨切り術(HTO)、人工関節(TKA/UKA)
    IKKO先生

    Dr Ikko

    この2つの間には、『保存療法では痛みが取れない、でもまだ手術には踏み切れない(あるいはしたくない)』という大きなギャップ(治療の空白地帯)があったんだ。ここを埋める『第3の選択肢』として登場したのが、PRPや幹細胞といった再生医療なんだよ。
    保存と手術の間……確かに、そこで困っている患者さん、たくさんいます!
    メデ子

    メデ子

    誤解していませんか? PRPの本当のメカニズム

    IKKO先生

    Dr Ikko

    じゃあ、PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)がなぜ効くのか。 メデ子先生、PRPを打てば『すり減った軟骨が元通りに再生する』と思ってる?
    えっ、再生医療っていうくらいだから、軟骨が生えてくるんじゃないんですか?
    メデ子

    メデ子

    IKKO先生

    Dr Ikko

    そこが一番の誤解ポイントだ。現在のエビデンスでは、PRP単独で『肉眼的に明らかな硝子軟骨が再生する』という効果は証明されていないんだ。
    ええっ!? そうなんですか?
    メデ子

    メデ子

    IKKO先生

    Dr Ikko

    PRPの主役は、血小板に含まれる成長因子(Growth Factors)だ。これらが関節内で何をするかというと、主な役割は以下の2つだ。
    主な役割
    • 抗炎症作用:炎症性サイトカインを抑えて、滑膜の炎症を鎮める
    • 組織修復の環境づくり:コラーゲン産生を促したり、細胞が集まりやすい環境を整える
    IKKO先生

    Dr Ikko

    つまり、『軟骨を生やす』というよりは、『関節内の悪い炎症環境を改善して、自己修復力を後押しする』というイメージの方が正しいね。

    白血球は「あり」か「なし」か? LR-PRPとLP-PRP

    なるほど、環境改善なんですね。でも先生、PRPにもいろいろ種類があると聞いたんですが……。
    メデ子

    メデ子

    IKKO先生

    Dr Ikko

    よく勉強しているね。大きく分けて、白血球を含む量を指標として分類されることが多い。
    PRPの種類
    • LR-PRP(Leukocyte-Rich PRP):白血球を多く含む
    • LP-PRP(Leukocyte-Poor PRP):白血球をほとんど含まない
    IKKO先生

    Dr Ikko

    メデ子先生、白血球(特に好中球)が大量に関節に入るとどうなると思う?
    好中球……炎症反応を起こして、痛くなりそうです。
    メデ子

    メデ子

    IKKO先生

    Dr Ikko

    正解。だから、膝OAのような慢性炎症に対しては、余計な炎症や痛みを避けるために『LP-PRP(白血球が少ない)』の方が適しているという報告が多いんだ。 逆に、難治性の腱炎などで組織を一度壊して治癒機転を働かせたい場合は、あえてLR-PRPを使うこともあるけどね。

    「PFC-FD」は何が違う?

    あ、そういえばネットで色々検索していたら、『PFC-FD(PRP-FD)』って書いてありました。これは普通のPRPとは違うんですか?
    メデ子

    メデ子

    IKKO先生

    Dr Ikko

    FDはFreeze-Dry(凍結乾燥)の略だ。 通常のPRPは細胞を活かしているんだけど、PFC-FDはフリーズドライ化するためPRPは無細胞なんだ。 特徴は3つ。
    PFC-FDの特徴
    無細胞化:細胞成分(赤血球・白血球)をセルフィルターにより除去している
    痛みの軽減:細胞成分がないから、注射後の腫れや痛みが通常のPRPより少ないと言われている
    保存が可能:フリーズドライだから、常温で長期間保存できる
    IKKO先生

    Dr Ikko

    FDは再生医療関連法の適用外のため、医療機関としては審査や申請の準備がなくて始めやすいという特徴もある。
    ただあくまで再生医療法に基づく治療ではないため再生医療としてのPRP療法を標榜できないんだ。

    まとめと次回予告

    なんだかスッキリしました!こういうことですね!
    メデ子

    メデ子

    まとめ
    • PRPは手術と保存療法の間を埋める第3の選択肢
    • 軟骨がニョキニョキ生える魔法ではなく、抗炎症と環境改善がメイン
    • 膝OAには、痛みが少ない『LP-PRP(白血球が少ない)』が良さそう
    IKKO先生

    Dr Ikko

    その理解でOKだ。 でもメデ子先生、一番大事なのは『誰に打つか』だ。 進行しきった末期の変形性膝関節症の患者さんに『これで治りますよ』なんて言って打ったら、それは詐欺に近いことになりかねない。
    ひぃっ……! 確かに、どこまで効くのか見極めが難しそうです。
    メデ子

    メデ子

    IKKO先生

    Dr Ikko

    というわけで、次回vol.2では『PRPのエビデンスと適応』について話そう。K-L分類のどこまでが適応か、具体的に解説するよ。
    (vol.2へ続く)